言葉を音として聞くことの2009年09月01日 03時43分24秒

9月1日の「爆笑問題のニッポンの教養」のゲストは
世界に轟く坂本龍一教授でございました。


通称、「爆問学問」「爆笑学問」ともいわれるこの番組は、
爆笑問題の二人が個性的な研究を行ってる教授(一般人)と、
研究テーマを中心にあーでもないこーでもないと話し合う番組で、
過去放送の日本テレビ系の「爆笑問題のススメ」とやや似ています。
(これも作家と爆笑問題があーでもないこーでもないとする)

まあ、ざっくりと言いましたけど、本当はもっと中身は濃いです。

さて、坂本龍一の回の場合、番組自体も10分拡大のSPで、
本来の番組を超えたスペシャルな扱いのようで、
全体的には教授と爆笑問題の二人の普段聞く音楽を切り口に、
坂本龍一の私的な面に踏み込んでいった感じです。

その中の教授の発言で興味を引かれたのは、
爆笑問題のお気に入りの歌として、
サザンオールスターズの曲をかけたとき、
「まず問題なのが、歌詞が僕の耳に入ってこないの」という発言。
おおお、教授でなければ頭おかしいかもと思われる発言。

ちなみに教授がかけた音楽は、民俗音楽っぽいものとか、
ジョン・ケージの「4分33秒」などなど。


これについて、恐れを知らずに教授の耳について
私なりに考察させていただきますと。

最近、私は"言葉"について、意味以前の、言葉自体がもつ、
響きから感じる印象・感触について考えることがあります。
例えば、「幸せ」「ほんわか」とかは音自体が心地よく、
「殺伐」「ザクザク」などは音自体が不快な響きがあります。
それは言葉の持つ意味よりも、発音から受ける印象です。
良い言葉を良いと感じるのは、意味を知っているからではなく、
実は言葉の持つ音そのものが良いからではないのか、と。

もしそうならば、好まれる小説も映画の台詞も、言葉の意味の他、
発音と発音の組み合わせによって、別れるのではないでしょうか。

そして、音楽も。
私はジョン・レノンの「イマジン」を初めて聞いたとき、
歌詞の日本語訳は全く知らなかったけれども、
ごく自然に涙が伝い落ち、これは良い曲だと思いました。
それは、彼の選んだ言葉のリズムが彼の声によって発せられた時、
心地よい音楽となって言葉が流れ込んできたからだと思います。


つまりは、坂本龍一の耳は、
歌詞を言葉として捉えて意味を解釈するよりも、
歌詞の言葉の発音すらも楽器の奏でる音などと同一と捉えており、
そういう耳で聞いている結果、歌詞は自分に心地よい"音"として
認識されなかったということではないでしょうか。

これに対して、爆笑問題は失恋などの経験と歌詞をダブらせて、
感情移入して曲に聞き入るというスタンスを取り、
明らかに歌詞の言葉の意味を解釈しながら聴いています。


ずっと前に、「歌詞に意味は必要あるのか?」という問いを
音楽雑誌で読んだことがあり、私はその時は歌詞絶賛派で、
「何を言っているのやら」と否定したものですが、
最近になってなんとなくいわんとしていることが
分かりかけてきたような気もしています。


坂本龍一の耳が言葉を音楽として捉えるとして、
近い耳を持っているのは井上陽水のように思います。
実は還暦を迎えた井上陽水が四夜に渡り40年間を語るという番組も
NHK教育で先頃放送されており、これも楽しく鑑賞しましたが、
彼も、独自の文法を作り出し、日本語の文法を無視して
リズムありきな作詞をよく行っています。
それが独特の声と音楽と相乗し、井上陽水たる音楽を生み出す・・・。


言葉の持つ音を感じること。
それは音楽的なことや創作活動に生かすものの他に、
私達が普段の会話でも意識するべき感覚だと思います。
同じような内容の会話でも、言葉のチョイスによって、
和やかにもとげとげしくもなり、
あるいは、全く同じ言葉を使用したとしても、
声の抑揚の取り方によって心地よくも不愉快にもなる。

坂本龍一の耳、井上陽水の耳とは言ったものの、
実は言葉を音として聞き、その音から受ける感触で
気分が揺れ動くというのは私達がごく普通に持っている感覚。
私達は幾つもの言葉を重ねて人と人と関わっています。
ならば、相手に言う言葉の一つ一つ、無言でさえも、
大事に考えて気遣っていきたいものです。

願わくば心地よい音楽のように心地よい会話ができるように。


さてさて、「爆笑問題のニッポンの教養」、
次週のゲストは浦沢直樹先生だそうですよ!
20世紀少年の落としどころにも言及しちゃうって楽しみ~。
って、なんかゲストが教授じゃくても良くなってきてるような・・・。

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