栄光の盛衰 ~「ウォール・ストリート」 ― 2011年02月14日 23時36分45秒
オリバー・ストーン監督、マイケル・ダグラス&シャイア・ラブーフ主演
「ウォール・ストリート」についてのこと。
「ウォール・ストリート」についてのこと。

ピロロロ~ファファファ~♪
それで伝わるかどうかはさておき、本作の主人公、ジェイコブ青年の携帯の着信音は、
僕の記憶と耳もし未だ衰えていなければ「続・夕陽のガンマン/地獄の決斗」で、
クリント・イーストウッド、イーライ・ウォラック、リー・ヴァン・クリ-フが
登場するときにクレジットと共に流れる曲ではなかったでしょうか。
「続・夕陽のガンマン/地獄の決闘」は1966年製作のマカロニウェスタンで、
イーストウッド主演の「荒野の用心棒」「夕陽のガンマン」と合わせて
「ドル箱三部作」と呼ばれた作品群の最終作。
マカロニの中でもこの三作は(話の繋がりは無い)屈指の稼ぎ頭として、
映画史の中でもクリント・イーストウッド、セルジオ・レオーネ監督、
音楽のエンニオ・モリコーネらの経歴の中でも燦然と輝いています。
イーストウッド主演の「荒野の用心棒」「夕陽のガンマン」と合わせて
「ドル箱三部作」と呼ばれた作品群の最終作。
マカロニの中でもこの三作は(話の繋がりは無い)屈指の稼ぎ頭として、
映画史の中でもクリント・イーストウッド、セルジオ・レオーネ監督、
音楽のエンニオ・モリコーネらの経歴の中でも燦然と輝いています。
しかし、コンパクトな尺と緊迫感とリズムの良い構成だった
前二作に比べると「続・夕陽のガンマン」は上映時間は3時間に及び、
物語のスケールも拡大、登場人物も大増加するなど、
あらゆる面で作品全体が巨大化した結果、
観賞した側の正直な印象としては、見せ場はあるものの
全体的には魅力を薄めてしまった感があります。
それはヒットを飛ばす中で陥った、何かを置き去りにしたまま膨れ上がった、
ある種の暴走が生み出したものかもなのかもしれません。
そんなバブリーな運命に絡め取られたのではないかと思しき作品の曲は、
自分の好みで着信音に選んだ(携帯の音というのは、十中八九、持ち主の
好みを反映してると言っていいはず。)ジェイコブの資質を
暗に示していることを感じさせてはくれないでしょうか。
「ウォール・ストリート」は1987年の「ウォール街」の直接の続編。
監督はどちらもオリバー・ストーンで、前作は「プラトーン」に続き、
チャーリー・シーンを再度主演に起用して製作されています。
(ちなみに、父親のマーティン・シーンと親子役で共演。)
あの頃のオリバー・ストーンは1989年に「7月4日に生まれて」
1991年に渾身の作「JFK」を発表し、脂が乗りに乗っている時期だと思う。
今は少し脂ギッシュでメタボな作品を生み出している様に思えますが。
「ウォール街」はその名の通りアメリカの金融・経済で重要な位置を占める
ウォール街を舞台に名も無き若き証券マンが強大な力を誇る投資家に接近し
たちまちのうちに富を築くも非情な投資家に騙されて転落していく、
金の力に魅入られた男達の波乱に満ちた盛衰のドラマ。
この残酷な投資家・ゲッコーをマイケル・ダグラスが演じ、
証券マンを演じたのがチャーリー・シーンでした。
この映画は高い知名度を誇り、評価もされましたが、
「ウォール・ストリート」の発表は当初から「何故つくるのか?」と
疑問の声があがり、それは世情に照らして今作られる理由を問うよりも、
どこからそんなことを思いついたのか?と言った訝る声が大勢でした。
僕もまたそういった疑問を持った一人で、確かに成功作ではあるけれども、
ヒーローものやSFの再始動ならばいざ知らず、20年以上も経って
シリアスドラマの続編というのを人は求めるのか?と思います。
やはり金融界のドラマで、しかもダグラスはゲッコー役で続投するという。
何を隠そう、僕はマイケル・ダグラスをあまり好いていない。
近年は悪役よりの容貌でいるばかりでなく、雰囲気そのものが禍々しい。
私生活はこれまたアクの強いキャサリン・ゼタ=ジョーンズがその妻。
数年前に二人並んだショットは魔除けの様でもありました。
そのわりにはダグラスの作品は随分観てしまってしますが。
そんなあまりワクワク感の無い本作ではありましたが、
ただ一点気になったのがジェイコブ役にはシャイア・ラブーフが
キャスティングされているということ。
「トランスフォーマー」「インディ・ジョーンズ/クリスタルスカルの王国」
「ディスタービア」「イーグル・アイ」と僕の好みの映画に出演し
オムニバス編「ニューヨーク、アイラブユー」での彼は素晴らしかった…。
つまりは僕が注目するアメリカで一番の若手俳優であり、
それならまあ行ってみようかと思った次第。
ひいきの俳優がいるということは嬉しいことも困ったことにもなり得る。
そんな「ウォール・ストリート」のチラシは
「ゴッドファーザー」か「ディアボロス」かという雰囲気を醸していますが、
映画の冒頭はゲッコーの時代遅れ感から始まっていきます。
どうやら前作の最期でインサイダー取引と詐欺の証拠を抑えたものの、
悪い奴ほどよく笑うという然のゲッコーはやはり刑務所に入った様子。
彼の出所から物語は始まり、彼の荷物が係の者から返されていく。
そして「携帯電話」と言われて机の上に「ドン!」と置かれた、
その携帯電話の巨大なこと!若い連中は笑うよりも思考が止まるのでは。
この携帯電話だけで、誰も迎えに来ない出所を見せずとも、
もうアンタの時代じゃないのよね~残念さん、と物語ってます。
しかし、一時干物になっても水を得れば忽ち膨れ上がっていく。
主人公の青年ジェイコブが交際する相手はゲッコーの娘ウィニーだった。
ジェイコブもまた投資家として金融界で生きる人間であり、
当初はウィニーとゲッコーの仲を修復して結婚の許しを得るための働きかけが、
次第にゲッコーのカリスマ性と金の魔力に飲み込まれていく。
ただ、8年の月日と若い情熱家の信念はかつては氷の様だった
ゲッコーの人間性にやわらかな変化をもたらしてく。
先日、癌を克服したダグラスの映像もワイドショーで公開されましたが、
そこに映った彼にはかつてのダークオーラは無くなっていた気がします。
なんだかゲッコー=ダグラスともにかなり丸くなった様に思えて、
映画の中でも現実でもひとつの時代が過ぎた心境になりました。
それよりも驚いた、というよりギョッとしたのはチャーリー・シーンのカメオ出演。
前作の主人公バド役で出演する彼はなんだかアイドルっぽさが消えていた。
バドは「ウォール街」のラストで法の裁きを受けてその後苦難をあゆんだ、
それを受けたものかと思われますが、最近また離婚関連のニュースを受けて、
1990年以降のビミョーな映画歴と私生活のゴタゴタも重なって、
(テレビ方面ではかなり稼いでいるらしいのですが。)
チャーリー自身の苦労が滲み出ている様な気さえしてしまう。
色々なところで黄昏を感じてしまったのでした。
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