香川照之さん 日本魅録の休載2011年04月22日 23時24分42秒

20日にまた、定期購読のキネマ旬報が届きました。
4月下旬号から震災関連の記事が掲載されているのは、
以前の記事で書きましたが、今回は巻頭特集として、
「3月11日以降の映画界」と表紙にも文字が掲載されています。

巻頭特集には30ページ程が割かれており、二章構成で、
製作・配給・観客など各分野について論考され、
製作の立場と阪神大震災の体験者として大森一樹監督の寄稿や、
原発に関して触れた映画作家・ジャーナリストによる対談を掲載。

他はやはりいつも通りの映画紹介・批評記事になっており、
各著者のコラム・エッセイやコメント・編集後記で震災に触れています。
意外にもワールドニュースはほとんど震災には触れていない。
映画界からの支援の動きは頁の趣旨に合わないということでしょうか。

立川志らく師匠の言葉は映画を見る側の気持ちを、
ストレートに言い表していると言って良いのではないかと思う。
「今までは街が破壊されるCGを観て、凄い!と興奮したものだが、
我々はもっと凄まじい地獄を目の当たりにしてしまった。」
まさにその通りです。

師匠も挙げているパニック大破壊映画も、もはや嘘にしか思えない。
と、いうよりも「現実はこんなものじゃないよ。」と言ってしまうかも。

まるっきり荒唐無稽で拵えれていれば良いのですよ。
でも最近の映画は空想でもなんでも大体がリアル志向です。
もうリアルを追求して作られても、現実の方こそ現実感がないのですから。


さて、頁をめくって行くと終わりまで言っても、
香川照之さん執筆の日本魅録がありません。

この連載は2号に一度ではないので連続しているはずですが、
無いとしたら休載か終了しかありません。

そして、編集後記の後の頁に見つけました。
「日本魅録」今号のお休みについて香川照之さんより
として、香川さん本人からの言葉が添えられていました。

そこには一時は脱稿したものの、再度自ら熟読を重ね、このコラムで
書くべきものではないと判断したため休載することが書かれていました。
震災時における撮影作業の困難窮まる意味についての原稿、
ということですが、もちろん内容の詳細はわかりません。


その言葉を読む限り、香川さんが個人で葛藤し内面で深く考えたのだと思います。
その一時は脱稿した原稿、というのも慎重に選ばれた言葉で綴られたものでしょう。
前号から察するに被災地を気遣って熟考を重ねたことは想像に難くありません。

前号の二頁からも、今回の数行の言葉からも確かに言えること、
それは、本当に優しく真面目な人なのだ、ということだと思います。

他人の心の痛みを自分の痛みの様に感じることができ、
相手が悲しいときにはその倍の涙を流してしまう様な人・・・。
何度でもいいますが、香川さんはそういう人なのだろうと、
その短い文章を読むと改めて感じてしまいます。

昨今、僕自身への猛省も含めて、被災地に対する気遣いが感じられない、
ただ自分の言いたいことを言っているに過ぎない人がいるなかで、
その様に限りなく優しい人が現実にいるのだということが、
そのことが感じられただけでも僕らは心強く、篤く御礼申し上げます。

ですが、ファンの皆様がご心配される様に、僕もむしろ香川さんのことが心配です。
少なくとも、僕がキネマ旬報の定期購読を始めた2006年の暮れからこれまで、
香川さんが日本魅録の連載を休んだことは一度もなかったと記憶してます。

震災からこの様な時間を経て、直接の被災者ではない人であるにも関わらず、
そこまで考えているというのは、有難く、嬉しく思うのですが、
かえって自分を追い詰め過ぎてしまうのではないかと心配に思います。

「あしたのジョー」のプロモーション活動のテレビ番組で、
具志堅さんと興奮気味に話していた香川さんの熱い想い。
そんな想いをもって帰ってきて欲しいです。

僕らはもう大丈夫、とはまだまだ言いきれませんが、
かといって僕らを考えることで自分自身を傷つけてしまうことはいけない。
笑顔を失ってしまう人がいるのは、僕らは何より哀しいと分かっている。

僕らが向おうとする先には明るい光を求めていると思うから。
これから香川さんには、光をくれる太陽、燃え滾る魂であって欲しいと思います。
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