石巻、岡田劇場を想う2011年03月24日 21時01分34秒

本日は係りつけの病院に行き、先週は一週間しかもらえなかった
腎臓の薬の残りの分を処方してもらえました。

帰路で通りかかった、お好み焼き「田よし」の前で店頭販売していた
焼きたてのお好み焼きを買って昼食にし、
立ち寄った生協では、卵とトイレットペーパーを買えることに。

生協には、いわし缶などの缶詰やパンが少しづつ並んできており、
全くなかったときから、徐々に数は揃いつつある様に見えるものの、
"あるものはやたらある、無いものは全然無い"状態にシフト。
そんななか、近隣で枯渇状態になっているペットフードを買い、
隣家のアイドル犬にお土産としました。

完全な嗜好品はいまは不要ですが、卵や牛乳など栄養的に重要なものが無いことは
買うこと並ぶことが、生きるために要する状態ということかと思います。


さて、それは生きるために必要なのものなのか。

趣味に生きる人間にとって人生で何度か通過しなければならない問いかけ。
何を"生きる"と定義するかによって異なってきますが、
映画もまたその問いかけから逃れられないもののひとつです。

震災後の宮城県内の映画事情を調べますと。

仙台市の中心よりやや外れかけた木町通にあるフォーラム仙台は、
3月14日にやはり気になって僕も前の通りから見ていましたが、
直後は建物は無事だったものの、中の様子はやはり被害があった様でした。
先日はチャリティー上映が行われ、営業を再開。
現在のところは午前から夕方までの上映のみ。

レイトショーを行うには劇場スタッフと観客の皆様の安全を考慮すれば、
そのときではないということでしょう。
目下のところ、唯一の映画上映館ということになる様です。


フォーラム仙台の姉妹館で仙台駅東口にある映画館チネ・ラヴィータは、
入居するビル、BiViそのものが現在立ち入り禁止となっています。

仙台駅から西に続く歴史あるアーケード街・名掛丁にある、
仙台市内で最も老舗…というより他の映画館が閉館して、
チネを除けば仙台中心部映画館の最後の砦となっている
桜井薬局セントラルホールも現在営業中止です。

宮城県内のシネコンは、MOVIX利府・MOVIX仙台、
仙台コロナワールド、泉コロナワールド、
109シネマズ富谷、新石巻ワーナー・マイカル・シネマズ、
名取エアリ・ワーナー・マイカル・シネマズ、
シネマリオーネ古川、シアターフォルテ大河原、
以上、全て営業中止。
これらは設備点検と防災安全上の問題がクリアされるまでと、
また自粛の意味もあるのでしょう。

なお、TUTAYAやGEOも店内が滅茶苦茶になった、
スタッフが確保できない等々の理由からか、
(無論、自粛の意味もあろうかと思います。)
僕が利用する店舗の9割ほどが営業休止再開未定という状態。


と、いう映画壊滅的状態ですが、僕が一番気がかりだったのは、
甚大な被害を被った石巻市にある、歴史ある映画館「岡田劇場」のことです。

岡田劇場がある場所は津波が押寄せた石巻湾から注ぐ旧北上川を北上した、
石巻市中心部のJR仙石線石巻駅に近い、川の真ん中の中洲にあり、
つまり津波に襲われた場合、極めて危険な場所に建っているのです。

また、同じ中州には漫画家の故・石ノ森章太郎先生の「石ノ森萬画館」もあり、
テレビの映像ではその双方の無事を知ることができなかったので、
その安否がずっと気にかかっていました。

そしてネットで調べた結果、Cafe Vita  Life&Culture というブログで、
震災後の石巻の様子が細かに書かれており、
その中に岡田劇場に関する記述を発見しました。
記事によると建物は大きく破壊されてしまった様です。

…ああ、やはり…。やりきれない想いがこみ上げました。

岡田劇場はそれは多くの語り継がれる伝説の多い映画館でした。
歴史は幕末の劇場から始まったそうで、
昭和23年に映画館として改築され現在に至っていた、
建物の面から見ても風情ある映画館だったのです。
映画好きの石ノ森先生が自転車で二時間かけて通い続けたという逸話もあります。

僕はこの劇場で映画作品そのものは鑑賞したことは遂にありませんでしたが、
隣接する石ノ森萬画館で行われたイベントで入ったことがあり、
仮面ライダーのプロデューサー・平山亨さんと、
仮面ライダー1号・本郷猛、すなわち、藤岡弘、さんのトークショーを見ました。

藤岡弘、さんと握手をした想い出、そこに集まったみんなの少年の様な顔、
舞台に立った藤岡さんの、身長以上に大きく感じさせるオーラの様な存在感、
スクリーンに映し出された石ノ森先生の特撮作品の数々…。

劇場内は確か床は木の板で椅子の肘掛も木製だったと記憶しています。
やや四隅が薄暗く感じられるスクリーンはしかし映画は暗がりで見るもの、
という今は意義が変わりつつ味わいを滲ませていました。
いまは想い出の何もかもが懐かしい。

前述のブログによると岡田劇場の支配人様はご無事だったようで安堵しています。
しかし岡田劇場の佇まいはもう記憶のなかに刻むしかない…のでしょうか。

もうひとつ幸いというべきなのでしょうか。
ごく最近の映画のなかで、岡田劇場がロケに使われ、
その姿を僅かながら映像に刻んでいます。

「弁護士 布施辰治」と「エクレール/お菓子放浪記」の二本の映画。
特に「お菓子放浪記」は先行上映地の宮城県のなかでも、
さらに最速公開される劇場と予定されていました。
この二本について、機会を改めてさらに記事にしたいと思います。

今は、大切なことを言えないまま想い人がどこかへ行ってしまった様な心境です。
映画は生きていくための何か、答えはでませんがそれを照らす灯だと想い、
石ノ森萬画館とともに、そこへ必ず向わなければならないと思っています。


今日の歌は石ノ森先生と先生が愛した劇場を想い、
1988年の「仮面ライダーBlack RX」のED、「誰かが君を愛してる」を。
http://www.utamap.com/viewkasi.php?surl=B04778
~誰かが君を愛してる 誰かが君を信じてる 
誰かが君を求めてるどこかで どこかで~
実に優しく温かくそして、強く、生きるための力が湧く言葉だと思います。

(※藤岡弘。の誤りをご指摘を受けて、藤岡弘、と正しく訂正しております。 3月26日)

---------------------------------------------------------------------
〇5月16日 追記

当ブログでは岡田劇場さんとその経営会社オカダプランニングさんを助けるべく、
とくに岡田劇場さんが常々に行ってきた、巡回上映活動の復活に向け呼びかけを始めました。
岡田劇場さんは被災地の方々、とくに子供たちに映画を見せたいと奮起しておられます。
以下の記事(2011年5月15日)もお読み頂けば幸いです。

■石巻の岡田劇場・オカダプランニングを救おう! ~巡回上映の復活を~
 http://crystallog.asablo.jp/blog/2011/05/15/5866174

コメント

_ 慧 ― 2011年03月25日 05時32分40秒

商品が店の棚から消えた日、酒だけはしっかり並んでいました。
災害時に酒など自殺行為であることは本能的にわかります。ただ、これに手が伸びるのは精神的に苦しめられる今後でしょうか。

テレビのニュースで震災後の石巻の空撮を偶然目にすることが出来ました。
瓦礫の中に、あの石ノ森萬画館の外観がはっきりと見えました。
昼間の画像でしたが、あの瞬間は闇の中のともしびに感じられました。
あのすぐそばに、OB・ゆめのまんさくさん(HN)の理容室があるはずなのですが、
当人とはいまだに連絡がとれていません。
彼が以前、石巻を道案内してくださったのです。萬画館が無事なのだから・・・・
信じて待っています。







漫画 ワイルド7(望月三起也)  草波の台詞より

あんたはそうやってカッコづけしてりゃ国民に受けるだろうが
町をきれいにするにはドブをさらう人間も必要なんだ
汚い仕事をするやつがいなけりゃ世の中はよくならんのだ!!
私の部下はその汚い仕事で栄光もなく消えていく
それがわかってんのか あんた

_ 河永 ― 2011年03月25日 07時16分10秒

>慧さん

病院の先生も、肉体的にも精神的にもこれからが大変だと仰っていました。
逃避ではなく安心のお酒として飲める様にしていくのが
せめてできることなのかもしれません。

僕の親戚も海岸部から広渕の方まで逃げて助かった方もいます。
ゆめのまんさくさん、ご無事を祈ってます。

萬画館の外壁に打たれた「萬」の字が流された様で、
玄関ホールに瓦礫が入っている画像もみました。
あの宇宙船が元の姿を取戻して、
公園でアニメソングライブの活気が帰って来ることを祈ります。


ワイルド7の台詞でこの歌も思い出しました。
「君は人のために死ねるか」(歌:杉良太郎)
http://www.uta-net.com/user/phplib/Link.php?ID=9697

_ 高田直哉 ― 2011年03月26日 11時56分40秒

まずは先日の東日本大震災で被災された方々及び被災地の一日も早い復興と、亡くなられた方々のご冥福をお祈り致します。
宮城県内では映画館に限らず、とくに同市若林区は津波により廃墟同然の状態なのが新聞に掲載されていたのを見ました。映画といえば、「唐山大地震」というタイトル作品が上映延期になったことも無理はありません。
仮面ライダー・本郷猛役の俳優は「藤岡弘。」ではなく「藤岡弘、」氏です。藤岡氏といえば私が思いつくのが「せがた三四郎」です。

_ 河永 ― 2011年03月26日 15時42分58秒

>高田直哉さん

ありがとうございます。
友人知人が住んでいる地域が被害にあっており、
自分の状況を考えるとすごく複雑です。

映画は以前から様々な事情で自粛されましたが、
いざ自分達の身に降りかってくると
勝手とはわかっていながら以前とは違った思いで感じています。

藤岡さんの名前はすみません間違いました。
そうでした。「。」ではそこで終わってしまいますね。

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://crystallog.asablo.jp/blog/2011/03/24/5755901/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。

Loading