未来派LOVERS リミックスに思う良い仕事2010年08月06日 23時44分35秒

機動警察パトレイバーのCDを2枚買いました。

機動警察パトレイバー メモリアル・コレクション・シリーズ PATLABOR Vol.3 SONG COLLECTION“INTERMISSION”
機動警察パトレイバー メモリアル・コレクション・シリーズ
PATLABOR Vol.3 SONG COLLECTION“INTERMISSION”

機動警察パトレイバー メモリアル・コレクション・シリーズ PATLABOR Vol.6 Best Album“INTENTION”
機動警察パトレイバー メモリアル・コレクション・シリーズ
PATLABOR Vol.6 Best Album“INTENTION”

目的はVol.3に収録の宮内タカユキ歌唱の「機動警察パトレイバー」と
Vol.6に収録のMIOが歌う「PATLABOR’99」。

アニソン界のカリスマのお二方が歌い、作品名がタイトルに組み込まれており、
パワフルな歌声を聴いていると主題歌と思えるほどの歌ですが
これはイメージソングです(挿入歌としての記憶は無いですが、使用された?)。
パトレイバーの主題歌(OPテーマ)は曲名にも歌詞にも
作品名などは入ってはおらず、一見すると普通の歌に聞こえます。
(よく耳を傾ければ作品世界を形作っていますが。)

手持ちの音源はMDしかない、笠原弘子の「INTERFACE」も手に入り、
なかなかゴキゲンな内容のアルバムになっておりました。


しかしさて。注目はVol.3のトリに収録されている「未来派LOVERS」です。
この曲はパトレイバーの最初の主題歌、と言える曲で1988年に世に出ました。

ずっとこの曲、「未来派LABORS」だと思ってたら「未来派LOVERS」でした。
「レイバー(作品中に登場するロボの総称)達」ではなく「恋人同士」。
あるいは「愛好者」という意味もあるそうな。
なるほど、そうであれば歌詞にも曲調にもしっくりきます。

実際にこの曲に付いたオープニングアニメーションでは、
主人公の女の子・泉野明(いずみ のあ)のランニングスタイルと
夏の眩しい太陽光に爽やかなスポーツドリンクなどと言う画で、
笠原弘子の元気いっぱいな瑞々しい歌声とドンピシャ(古)となる。

これがその歌詞。
未来派Lovers/笠原弘子 - 歌詞GET
その健康的なまでに健康的すぎるオーラに、初めて聞いた当時、
12、3才ぐらいの私は何故だか躊躇し、以降、この曲は妙に気恥ずかしい。
別にヤらしいものを感じているのではなく、男子たるもの、
健康的すぎる女子力には妙に気後れすることは諸氏経験ござろう。
ロボットアニメと言えば漢の世界!という当時の常識に対して、
あまりに異質だったための戸惑いでもあったのかもしれない。

さて、この未来派LOVERSもMD音源のみだったので、
やっとCDで手に入ったと思いきや、リミックス版とブックレットにある。
ジャケットにも商品説明にもなかったのに関わらず、です。
僕はリミックスも嫌いではないけれども、やはりオリジナルが、
という人なので、ややコケたものの、とりあえず聞いてみることに。


するとこれが案外によろしい。記憶が薄れるのと美化されるのとで、
はっきりと比べられないものの、最初はオリジナル版かと思う。
しかし、よく聴いているうちにやはりリミックス版と分かる。
それがさり気なく組まれながらも隠し味の様に魅力を引き出しています。

リミックス版というのは下手なものだと、前奏・間奏を倍以上に引延ばすとか、
ピッピコ煩いだけでボーカルの邪魔にしかならないものだったりしますが、
このアレンジはオリジナルの魅力をよく理解し、
破壊はすることなくやり過ぎない程に増幅させることに成功しています。

原曲は田中公平先生の作曲・編曲ですが、このリミックス版は誰が指揮なのか。
商品紹介には川井憲次が(「パトレイバー」の音楽に深く携わるお方)
デジタルリマスタリングしたとあるけど、本体には無い。
田中公平先生ご本人ではない?シンセは大森俊之ですがはっきりしない。
仮に自身の作品だからと言ってアレンジが簡単になるものではありません。
自分で作っててもその作品の何が魅力だったのか、
それを理解していないまま進んでいってアレンジ・続編で失敗する人は多い。

BS熱中夜話のアニソン企画で、実演できるアドバイザーとして登場する
田中公平先生は、自身の編曲を語るときに「こんな大先生の作詞・作曲を
僕ごときがいじれませんよ。」と謙虚に語り、邪魔にならない僅かな間隙で
自分が膨らませる仕事をする、ということを語り実践して見せています。
(「超人機メタルダー」の主題歌「君の青春は輝いているか」の仕事など)

これを併せて考えて、少なくとも田中先生の意向に近いと思います。
作品の魅力を的確に見抜き、それを殺さずさらに膨らますと。
このリミックスアレンジは笠原弘子の当時17、8才のボイスを全く殺さない。
それどころか、当時よりも溌剌さと爽快感が増しています。

当時よりも心地よく感じられ、気恥ずかしさが消えたのは
こちらが経験を重ねたためでしょうか?
かつて1988年版を聴いていた方々も、
このアルバムに収録されたヴァージョンを聴いてみてください。
Amazonのページより視聴できます。

あの頃から今まで、を思い出すかも。
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