謙虚な巨人 ~「ポール・ニューマン/アメリカン・ドリーマーの栄光」を読む2010年07月27日 23時41分35秒

ポール・ニューマン アメリカン・ドリーマーの栄光
ポール・ニューマン アメリカン・ドリーマーの栄光

昨年暮れにキネマ旬報社より刊行された、
「ポール・ニューマン/アメリカン・ドリーマーの栄光」を
最近になってやっと、会社の昼休みなどでちびりちびりと読んでいます。


ちびりちびりなどと言うとお気に入りのボトルを毎晩少しだけ、
という感じでなかなか味わい深い気がする。

それくらい、この本は読んでいて不思議に心地よいです。


著者のショーン・レヴィはポール・ニューマンと話したことは無いそうな。
伝記を書きたいとニューマンサイドに打診したところ、断られた。
その断り方がまた良い。私達はもう十分すぎる栄誉を受けているから、と。
などと書いていると、この本をあとがき・謝辞から読んでいるとバレる。

ともあれ、映画評論家のショーン・レヴィは、
ポール・ニューマンについて語るために、
ニューマンが答えた膨大な量のインタビュー記事等をひたすら研究する。

文体には、ニューマンを優しく見つめる愛情がこめられている。
穏やかなガーデンを斜景に見るウッドデッキの揺り椅子で、
ニューマン自身や友人達が、著者が思い出を辿るような、
時間がゆったりと流れる感覚で語られていきます。

ニューマンがそうであったように、
著者も謙虚に、一つ一つ丁寧に言葉を選んでいます。
例えば、どうしても下層階級を話に出すような場合でも、
彼らはそれなりに理由があり…というように、
はっきりしないところはそのままに、
後はあなた自身で慮れ、と暗に留めていく。

まだまだ序盤なので、今後また新たな側面を見つけるかもしれませんが、
その姿勢は僕の中にニューマンの爪の垢とともに落としこんで行きたいものです。

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